空き巣被害の件数は年々徐々に減っているのが実情

就職の前に、卒業すら危ないんじゃないかと思われる先輩は、いつも俺の家に来てはダラダラと過ごしている。俺も人のことを言えた身分ではないが、週3でアルバイトをしているから先輩よりはマシだと思う。先輩は、酷い時は俺がバイト中でも、親に挨拶してちゃっかり部屋に上り込み、俺の漫画を読みながら俺の帰宅を待っていたりするのだから、もうどうしようもない。

勤労意欲もなく、もちろん勉強する気もなく、ただお金のかからない暇つぶしをして過ごす。そんな先輩に将来のことをどんな風に考えているのか、一度聞いてみたことがある。その時はたまたま、テレビで観たドラマか映画の影響だろうか。空き巣でもやって食いつないで行こうかなんて話していた。食いつなぐという言い方がなんだか格好つけているが、そもそもそんな、大した生き様を見せている人じゃない。それに、空き巣被害の件数は年々徐々に減っているのが実情だ。それは世間的に、セキュリティ対策がしっかりされてきて、他の犯罪より、空き巣に入る方がリスクが高くなっているということだ。空き巣に入りにくいからやらない。泥棒たちの、勤労意欲が下がっているといってもいいだろう。そんな時代に逆行しての空き巣発言。さすが先輩だ。

コンビニ強盗とか原付バイクによるひったくりとか、割と身近と思われる場所で犯罪は起きている。家人の不在を狙って盗みに入る空き巣という犯罪は、強盗やひったくりほどは乱暴ではないイメージだが、部屋を荒らされ金品を奪われということは、被害者の立場に立てば相当辛いだろう。それを未然に防ぐためにセキュリティについて考え、その対策のお蔭で空き巣被害が減っているというのはとても良いことだ。

そんな話をしなくても、もちろん本気で空き巣になろうとは思っていないだろうが、どうせ意欲に乏しいなら、せめて先輩は、自宅警備員くらいにはなってもらいたいものだ。